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産業廃棄物処理業界について

産業廃棄物処理業とは、事業活動によって生じる廃棄物を収集運搬及び処分する事業のことです。その業態は①収集運搬業、②中間処理業、③最終処分業の3つに分類されます。足元の業界全体の売上規模は拡大傾向にありますが、環境に配慮する社会的な動きが活発化しつつあるため、将来的には縮小せざるを得ない業界と考えられています。主な特徴として、中小事業者が大半を占める、差別化が難しく価格競争が激化している、重労働で人材採用難、許認可事業であり異業種からの参入障壁が高いといったものが挙げられます。これらの特徴から、今後業界全体でシェアの奪い合いが加速し、優勝劣敗が明確になっていくものと思われます。その点で上記課題にダイレクトに効果のあるM&Aが有効な経営戦略と考えられます。

産業廃棄物処理業界の動向・課題

売上規模は年々拡大しているが、将来的には縮小が予想される

総務省統計局の調べによると、産業廃棄物処理業の売上規模は2022年には3兆円を超えており、年々拡大しています。一方で将来的には人口減少に伴い、縮小していく業界と言われています。大量生産大量消費の風潮から、環境に配慮する省エネルギー化、廃棄物の再資源化が重視されていることも市場縮小を後押しすることになるとも考えられます。

出典:2022年経済構造実態調査(産業横断調査) / 政府統計の総合窓口(e-Stat)

他社との差別化が激しく、価格競争になりやすい傾向がある

産業廃棄物処理業の中でも収集運搬業は、その性質上、他者との差別化が難しく、価格競争になる傾向があります。さらに業界全体として、重労働であり、労働条件が厳しいことから人材を確保するのが大変でもあります。そのため人件費を上げてでも人材を確保しなければならず、結果的に利益率をより圧迫することになってしまうという課題があります。

資格が必要で参入障壁が高く、小規模事業者が多いためM&Aによる事業拡大のメリットが大きい

産業廃棄物処理業界は大手企業が非常に少なく、売上規模が数百億円以上の規模の企業になるとかなり数が限られてきます。つまりほとんどが中小規模の企業で構成されている業界であり、マーケットがかなり細分化していると言えます。

産業廃棄物処理業界のM&Aで期待できるメリット

事業の譲渡・売却・承継したい企業のメリット

効率の良い経営が実現できる

地域に根ざした業態であるため、他社と差別化するためには、より効率よい経営が不可欠です。近隣地域の企業とM&Aを行うことでリソースの共有や、サプライチェーンを広げることが容易になり、単独で賄わなければならなかった経営を効率化することが容易になります。

異業種の資本的、技術的バックグラウンドの獲得

同業は比較的規模が小さい会社が多いため、譲渡先の選択肢は限られてくる場合が多いです。異業種にまで視野を広げると、参入障壁の高さからM&Aを希望している企業は少なくありません。また、より強固なバックボーンを持つ企業とのM&Aも選択しやすくなります。製紙業を修業とする特殊東海製紙と産業廃棄物処理を手掛ける駿河サービス工業がM&Aを行った事例は顕著な例と言えるでしょう。

参考:株式会社駿河サービス工業の株式取得(小会社化)に関するお知らせ

専門技術と設備の取得

他社の産業廃棄物処理事業を譲渡・売却・承継することで、その企業が持つ専門的な技術や設備を取得できます。これにより、新たな分野や処理方法においても高度なサービス提供が可能となり、市場での差別化が図れます。専門的なノウハウや技術力は、競争優位性の向上に寄与します。

事業の譲受・買収したい企業のメリット

取得難易度の高い許認可を得ることができる

産業廃棄物処理業に関連する許認可は取得することがかなり難しいとされています。そのため、参入障壁がかなり高い業界であり、異業種から参入する場合はM&Aをするところから考える企業は少なくはないです。実際に外資系の大手企業が日本での事業展開のためにM&Aを利用している事例も存在します。

商圏の獲得

事業を行うために各都道府県の許認可が必要な関係上、都道府県を跨いで商圏拡大をするためにも、該当の都道府県での許認可が必要となります。そのため、商圏拡大にもM&Aは有効な手段となっています。

即戦力の事業拡大

他社の産業廃棄物処理事業を譲受・買収することで、即座に事業を拡大できます。新たに設備や従業員を揃える手間が省け、市場でのプレゼンスを拡充することが期待できます。これにより、競争の激しい業界での即戦力の構築が可能です。