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トラック運送業界について

物流業界のプレイヤーの中でも、トラック運送業者は最も多くの割合を占めており、8割ほどがトラック運送業で占められています。中でも、不特定多数から運送依頼を受けて、荷物を運ぶことで運賃を得る一般貨物自動車運送事業者の99%は中小企業で構成されています。運送の多頻度化、ドライバーの高齢化による人材難、長距離運送による長時間労働・重労働等、業界全体の課題は山積みになっており、改善が急がれる業界でもあります。M&Aを活用することで一定解決することができる場合が多く、資産を多く持つ業態ではないため比較的身軽にM&Aに取り組むことができ、シナジーが出しやすいため業界再編が進んできています。

トラック運送業界の動向・課題

EC需要の拡大により、需要の拡大と多頻度化が進行している

トラック運送業界では、EC需要の拡大により、需要の拡大と多頻度化が進行しています。オンラインでの買い物や配送が一般的になる中、商品の物流量が増加し、それに伴いトラック運送の需要が拡大しています。顧客の期待が高まり、配達のスピードや柔軟性が求められる中、トラック運送業者は迅速かつ効率的なサービス提供が不可欠となります。この動向に対応するため、トラック運送業者は輸送網の最適化や技術の活用を進め、需要の変化に迅速に対応できる体制の構築に注力しています。

参入障壁が低く、多重下請け構造により低賃金・重労働になりやすい傾向にある

トラック運送業界では、参入障壁が低く、多重下請け構造により低賃金・重労働になりやすい傾向が見られます。新規事業者が比較的容易に市場に参入できるため、競争が激しくなり、これが賃金水準の低下や過酷な労働条件の発生につながっています。多重下請け構造では、情報伝達が複雑化し、運送労働者が正当な賃金や労働条件を確保しにくくなることが問題視されています。この課題に対処するため、業界全体で労働環境の改善や公正な取引慣行の確立が求められています。

「2024年問題」によるドライバーの長時間労働規制への対策として、M&Aを活用して新規拠点獲得を行う企業が増加している

トラック運送業界では、「2024年問題」によるドライバーの長時間労働規制への対策として、M&Aを活用して新規拠点獲得を行う企業が増加しています。規制強化に伴い、ドライバーの働き方改革が求められ、労働時間の適正化が求められています。これに対応するため、企業は地域ごとに拠点を増設し、効率的な物流ネットワークの構築を図ります。M&Aを通じて新規拠点を獲得することで、労働力を分散配置し、長時間労働の是正と同時にサービスの質を維持するための戦略的な手法が広がっています。

エリアや荷主の観点でシナジーのある企業とM&Aを行うことで、積載率の改善や実働率の改善が見込まれる。

トラック運送業界では、エリアや荷主の観点でシナジーのある企業とのM&Aが増加しています。この動きにより、企業は相互に補完しあう強みを活かし、積載率の改善や実働率の向上が見込まれています。エリアごとのネットワークの統合や荷主との連携により、輸送ルートや運用効率が最適化され、効果的な物流サービスが提供されることでしょう。これにより、業界全体でコスト削減や環境負荷の軽減などが達成され、持続可能なトラック運送業務の展開が期待されています。

トラック運送業界のM&Aで期待できるメリット

事業の譲渡・売却・承継したい企業のメリット

運賃増額、効率的な運送の実現

より大きな企業、上流の企業とM&Aを行うことによって荷主に対してより強い交渉力を獲得したり、積載率の改善の効果が期待できます。非常に多くの競合企業が存在する業界であり、いかに良い条件で取引ができるかが中長期的な生き残りの重要な戦略となります。

事業の譲受・買収したい企業のメリット

2024年問題の対策

2024年問題とは、働き方改革関連法によって2024年4月1日以降は自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題のことを指します。これによりドライバーの長時間稼働に規制がかかったことになります。つまりは物流業者にとってはこれまで必要なかった拠点を新たに設置する等の対策を講じなければならないことになります。これをM&Aで解決する動きが増えてきています。

運送の効率化

エリアや荷主の観点でシナジーのある企業とM&Aを行うことで、積載率の改善や実働率の改善が見込まれます。人件費や燃料費といった運送業の中で大きなコストとなる部分をいかに効率化によって、適正化できるかというのは重要なポイントとなるため、M&Aは有効な手段となります。