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タクシー業界について

タクシー業界は100年以上の歴史を持つ業界でありますが、近年は主要都市中心にITサービスとの連携が強化されつつあり、スマホアプリから予約ができたり、現金クレジットカード以外の決済手段が利用できたりとその利便性が向上しています。業界のシェアは大手が大半を占めており、かなり寡占化が進んでいる業界の一つと言えます。徂徠バーの高齢化や燃料費の高騰など中小の事業者には負担の大きい課題がで多く、必然的に資本的な体力がないと生き残れない状況になってきており、M&Aによる業界再編が進行しています。中小の事業者にとっても経営面はもちろんやサービスの質向上やコストメリットの観点からもM&Aは有効な手段となると考えられるでしょう。

タクシー業界の動向・課題

大半のシェアは大手で占められており、業界再編が進んでいる

出典: ハイヤー・タクシーの車両数及び輸送人数 国土交通省

タクシー業界の主要プレイヤーは「法人」と「個人」に分けられます。国土交通省の調査では、2019年時点で法人の車両数は約19万台、個人の車両数は約3万台であり、法人は個人の6倍以上の社数を保有しています。また法人のプレイヤーは大手、準大手、協同組合の3種が主要であり、かなり寡占化が進んでいます。運輸業の中でも生き残りをかけたM&Aが多く行われている業界となっています。

不景気、人口減少等の煽りを受け、業績が右肩下がりの場合が多い

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出典: 輸送人員及び営業収入の推移 / 一般社団法人 全国ハイヤー・タクシー連合会をもとに弊社で作成

上図の通りタクシー業界の営業収益は1990年をピークに右肩下がり減少を続けています。中長期的な不景気において、公共交通手段の中でも、運賃が比較的高額的かつ代替が効く手段であることが一つの要因として考えることができます。またここ数年についてはコロナウイルスの影響で客数が激減し、一部タクシー会社が買い物代行や宅配など車両を使った異業種のビジネスに着手する事例も見られました。今後、主要都市での需要は一定回復することが予想できるものの、地方では人口減少に伴い縮小して行くことが予想できます。一方で高齢者の多い地方ではタクシーは重要な交通手段でもあるため、仮に剥離であっても社会インフラとして維持していかなければならず、大きなジレンマが存在しています。

供給側の課題としては、ドライバーの高齢化や燃料費等の運営コストの高騰が挙げられます。前者については若いドライバーの担い手が少なく、このままいけば高齢者のドライバーが大半になっていきます。特に昨今高齢者ドライバーの交通事故が問題視されていることもあり、より利用者から敬遠される可能性があります。また担い手を確保できない他の理由としては、第二種免許を取得しなければならないことや、安定的な収入を確保できないこと、不規則な労働時間等複数の要因が考えられます。後者については、燃料の高騰は収益悪化に直結する死活問題です。またサービスの拡充による設備投資やキャッシュレス決済の手数料も収益を悪化させる大きな要因となっています。

社会インフラという性質上、M&Aによる事業存続が重要

タクシー業界は社会インフラとしての性質を有しており、その特性からM&Aによる事業存続が重要視されています。交通手段として広く利用され、地域社会において不可欠な存在であるタクシー業界は、安定的なサービス提供と事業の持続性が求められています。このため、競争激化や市場変動に対処するために、企業はM&Aを活用して事業領域を拡大し、効率的な経営を図る戦略を取っています。M&Aによって業界のリーダーシップの確立やサービスの向上が期待され、社会インフラとしてのタクシー業界が持続可能な形で発展していくことが目指されています。

コロナ化においては、デリバリーを行う等の事業多角化の工夫もなされている

タクシー業界では、新型コロナウイルスの影響において、事業多角化の工夫がなされています。感染症拡大の影響で需要の変動が生じた中、タクシー企業は柔軟かつ創造的な対応を迫られています。そのため、デリバリーサービスの提供など、タクシー業務以外の領域に進出する企業が増えています。これにより、需要の多様性に対応し、事業の安定性を確保する一方で、地域社会においても便利で多様なサービスが提供されることが期待されています。感染症対策と事業多角化の組み合わせが、タクシー業界の持続的な発展に寄与しています。

タクシー業界のM&Aで期待できるメリット

事業の譲渡・売却・承継したい企業のメリット

事業の存続ができる

単体での収益改善が厳しい市場環境であるため、大きい資本と資本提携することは非常に重要です。組む相手によっては、ブランド力の向上で集客力をアップさせたり、採用の強化等の重要な課題を解決することができます。地域のインフラとしての機能を守ることができる可能性が高まります。

コストの削減

経営部分を統合することで、よりコストメリットのある経営体制に以降することができます。また単独では投資ができなかった分野についてもグループとしての資本で賄える場合もあります。例えば現金やカード以外の決済手段の導入が挙げられます。決済手段一つ取っても利用者の利用判断の大きな材料になる、かつ競合との差別化になるため重要な投資となります。

既存の営業エリアとネットワークの取得

他企業からの事業の譲渡や買収により、既存の営業エリアやネットワークを取得できます。これにより、新規参入の際にかかる営業エリアの確保やネットワーク構築の手間を軽減でき、即座に事業展開を開始することが可能です。特に需要の高いエリアや需要が増加傾向にあるエリアを手に入れることで、市場での存在感を高めることができます。

事業の譲受・買収したい企業のメリット

新規参入・人材の採用が容易

人材採用が難しい業種であるため、新規参入にはM&Aが有効な手段となっています。全国的に業界再編が進んでおり、いかにマスを取れるかという点は重要です。新規のエリアへの参入の観点でもM&Aを活用すべきといえます。またタクシーには一種の広告効果もあるため、地域で何かサービスを提供している事業者であれば、その点でのシナジーも見込めます。

市場進出の迅速化とリスク軽減

他社のタクシー事業を譲受・買収することで、市場進出が迅速化され、新規に事業を開始する際に発生する時間とコストを大幅に削減できます。既存の事業を取得することで、市場におけるポジショニングが確立され、競合他社との競争においてリスクを軽減することが期待できます。

効率的なリソース活用と経営効果の最大化

他社のタクシー事業を譲受・買収することで、リソースの統合や業務プロセスの最適化が実現できます。共通の業務や施設を有効活用することでコスト削減が可能となり、業界内での競争力を強化します。また、経営資源の最大化を図ることで、収益性を向上させることが期待できます。